Armour Modelling
9月号特集
東部戦線 SS503重戦車大隊キングタイガー



"フィギア、車輌、グランウンドワークのコラボ、そしてそれらの特徴を強調するレイアウト。"


作例等頻繁に登場するキングタイガーに新鮮実を持たすには細かい交渉的要素も大切だが、大胆なレイアウトが効果的であると考えた。フィギアを傾いた車体の上下の目立つ配置することによりその巨大さを見せる工夫をした。前のめりの構図は高低差が自然に演出されるが、木々そして低い草を配置することにより更にその効果を強調させた。また掘り返された地面や深くめり込んだ車体で重戦車の"重さ"の再現を試み、そして季節感を全面に出す為に木々に春を思わす新緑を吹かせた。情景作品全体が与える"インパクト"は主役の完成度は勿論だが、そのレイアウト、そして必然的に多くの面積を占める(良く計算され作りこまれつつも目立ち過ぎない)グランドワークが全体とうまく調和してこそフルに出るものでありその重要性を是非感じていただきたいと思う。車輌、兵隊の装備品、塗装で、特定の戦場の臨場感等を出すのは勿論だが、グランドの作りこみは作品のレベルUPには欠かせない存在であり、地面に同様のアプローチを持ち込めばより説得力の在る物となる。またリアルさの演出には質感も大切。ウエザリングを含む塗装をおこなう際、兵士、車輌各部の光沢そして地面の異なる部分の湿り気具合の再現には特に注意した。

SS503重戦車大隊キングタイガー:

イメージを浮かべる上で重戦車大隊記録集2・SS編の戦記は最良の資料の一つだった。図面や写真からだけでは想像できない部分を補完してくれるため情景製作にはありがたい。製作面ではMGバルジ特集齋藤氏の記事が大変参考なる。第一中隊以外の車輌にはマーキングは殆ど施されなかった。しかしキルマークだけは歴戦の彼らに相応しく極端に多く描かれていた。作例では13本手書きで追加した。迷彩塗装はダークイエローの面積が多い傾向にある。車輌の生産時期は194410月以降ぐらいのものに設定。塗装は全てタミヤアクリル、車体上部は迷彩塗装が無い。基本色はダークイエロー+ホワイト+デザートイエーロー、茶系はNATOブラウン+基本色(少量)、緑系にはフラットグリーン+基本色(少量)を使用した。上下の色調を変化させるために基本色のバリエーションを作り、砲塔と車体は別々に塗装。砲塔には明るめのダークイエローを使用した。砲身には部分的にクリアを吹いている。ウエザリングは品よく汚し、やり過ぎないように注意。こだわりの泥(汚れ)の表現は以下のようにまとめた。

乾いた泥(乗員の足跡風に多少使用)=砂(細かいもの多め)、木屑(少量)、木工用ボンド、スタティクグラス(少量)、少量のカベ材(白ではなく灰色)、アクリル塗料

湿った泥=上の物にアクリルの濃い目の色を足す。スタティクグラスは多目

最も湿った泥=こびりつけた泥の上から着色したクリスタルレジンを塗りたくる。

埃は主に車体全面、後部、側面下部車体上面の特に前部、そして砲塔上部の前部、エンジンデッキ全体に施した。チッピングには茶、グレー、ダークイエロー、デッキタンの
4色。



フィギア:

バーリンデン製品を中心に改造。ホーネットの頭部を使用している。武器追加の装備品はドラゴン
G2、ストラップ類はデューロパテ、髪、マフラー等はタミヤエポパテを使用。

SS戦車兵
末期になってもSS重戦車大隊の乗員は上下黒の戦車兵用ユニフォームを着用している場合が多かった。迷彩効果も無いこれらの乗員服は機能的観点からは必ずしも優れていたと言えるものではなかったが、この選択は強烈にエリート意識の強かった彼らならではのこだわりであったようである。

SS擲弾兵
あらゆる迷彩パターンが存在するために、個性の強調には全く困らない。登場する兵士全員が異なる迷彩服を着用している。迷彩パターンは雑にならないように丁寧に塗装をおこなう。それぞれのパターンをよく観察、分解。各色の占める比率、そして形状、またそれぞれの色がどう重なるのか等頭に入れてから作業を進める。また全体の色調を合わせるために、基本色をそれぞれの迷彩色に微量混入させている。基本的に墨入れ、そしてグラデーション塗装は迷彩が終了した時点で行うが部分的に影を先に入れる場合もある。

また作品全体を引き締める木製の台の製作はネロオリジナルに別注した。



単調にならない様に鋳造表現、溶接部分、装甲板等各部表面処理をおこなう。
エリート戦車部隊の戦闘中における車載装備品は他の部隊と比較するとシンプルな傾向がある様なので極力少なくした。
Cクランプは装着済み、牽引用ワイヤーはキット&ナイロン製ロープ。カズテンの予備履帯は連結ピンを通すためにピンバイスで加工。ピンはプラ棒。
防御効果
UP用に車体全部両側面にもワイヤーで装着。塗装は各履帯の色調が少し違うように注意し、錆びには茶、オレンジ系の3色を仕様した。エッチングはヴォエジャー製。クランプ類はスケール的には恐らくアベールより正確かもしれないが、大変細かい。サスペンションは稼動にしておい凸凹の地面になじみや易いようにした。またダメージ表現は小銃の被弾跡、フェンダー欠損、尾灯、ボシュライトは欠損想定で基部のみ取り付け、ワイヤー追加している。砲塔内部にはタミヤキングタイガーの砲弾ラック部品を使用。砲弾等小物を多少配置。




待ちに待った理想の商品

以前から木の表現方法についてはこだわりたい・・・と色々考えてきたのですが、これといって使える商品になかなかめぐり会えず苦労してきました。しかし今回(有)和巧社から発売されたペーパープラントキットは、あらゆる意味において大変優れたもので、これらを使用することによって今まで殆ど可能ではなかったレベルの高いリアルな樹木の製作が一気に現実味を帯びてきました。

紙であるために塗装、加工が大変容易に行えるので誰にでも気軽に使用する事が出来ます。ディテールに関しては申し分なく、それぞれの葉には葉脈も刻み込まれています。また商品自身の製作工程においてもエッチングなどとは異なり、様々な薬品を使用するとも無く、余白部分も紙であるために特殊なごみは一切出ない環境重視の製品。同社は意欲的に新製品開発を行っており今後の情景シーンを大きく変えるものであると大変期待しています。

今回は新緑の表現ということで、
1/48 雑木Brushセットを使用しました。比較的短時間でこれだけの木をカバーすることは(作例の場合、製作時間が本当に限られていますので助かります。)今までは不可能でしたが、この製品を使えばそれほど苦労せずに完成させる事が出来ちゃいます。


製作:

切り出す前に塗装は完了させます。
  トーンの違う緑を3色ほど準備して塗装をおこなう。

カッターで部品を切り出す。

面倒ですが葉1枚1枚を多少湾曲させる。

*"葉の出そうな場所"に木工用ボンドで接着していく。
この作業に関しては本物をよ〜く観察するすしかありません。

木、本体には枝振りの良い本物を使用。



新緑の表現には(有)和巧の紙製の葉を使用。レーザー加工された製品の制度は見事で今までに無い表現を確約してくれる。折り曲げ、塗装も紙であるために容易に行える為作業効率が大変よい。シート状の製品をエアブラシで塗装後(5色使用)、新芽、落ち葉の表現に多用した。光沢をもたすために地面に接着後、クリアを軽く吹いている。草等はいつものスタティクグラス、ネコじゃらしの組み合わせ。泥表表現に関しては今回最も重いウエットな部分に関しては泥色に着色したクリスタルレジンを使用、そして乾燥、また半乾きの部分に関しては"地面の素" (車輌の泥表現を参照)に混入させた塗料の量で違いを出した。





フィギア:
装備品の充実度を見せるために、武器には
MP44とPM40を選択。軍服も末期にもかかわらず破れなど殆ど無い状態の良いものである。上下に迷彩服を着用している場合は上下のパターンを変えている。また季節の変わり目であるために、春用と秋用の両方を使用。個性を持たせるために略帽は異なるものをそして、所持品、ポーズ等で変化をつけた。塗装に関してはタミヤのグレー系を基本色とし、ダークグレイ、ジャーマングレイ、フラットブラック(全てタミヤ、この種類の色に関してはタミヤの方が良いフラット感が出るため。)でグラデーション塗装をおこなう。記章等はエッチング&パテにて自作。