Hop on comrade let's motor out of here!


今回のお題はフィギアと絡めたトライスター、1号操縦訓練用トラクターのビネット製作であります。第1次大戦後、厳しいヴェルサイユ条約の規定により戦車製造開発を行えなかったドイツ陸軍は農業用トラクターとしてこの車輌を開発、主に操縦訓練用に用いられました。第2次大戦中はその本来の用途の他に少数ながら弾薬及び兵員の運搬、また各種火砲の牽引等も引き受け活躍したようです。作品では大戦後期をイメージしながら、兵員輸送に駆り出された"老兵"として製作を行いました。本車はオープントップで通常武装も追加装備されなかったので、目だった改造は行えませんでした。よっていわゆる大戦後期に使用された装備品をオリジナルと多少交換、そしてそれらしく塗装することにより時期的な雰囲気をかもし出そうと努めました。キットそのものにはエンジン、そしてトランスミッション等が精密に再現されていますので、整備中の風景等面白い設定がいろいろ考えられるのではないでしょうか?また付属のフィギアも質が高く使い勝手のよいものでした。


*オリジナル性

多くの優れた作品を誌上で目にしますが、果たして自分の作例は読者の方々にどのように受け止められているのでしょうか?先輩方の超絶な技術を使わせていただき、完成度を上げるよう努力するのは勿論ですが、それのみでは単なる"模写"に終わってしまいます。(そもそもそれさえも可能ではない場合が殆どですが・・)それらは自分個人の作品として面白味に欠けた一品に仕上がるだけで無く、見る人にも新鮮な印象を与えることはおそらく出来ないと思われます。やはり情景を製作するにおいて何か自分にしか出せないオリジナル性の高い要素を盛り込む必要があるはずです。今回はそれらを念頭に個人的に以下の部分には力をいれました。



1:塗料の選択

比較的マイナーなアクリル「タミヤ・ヴァレフォ」をほぼ全ての塗装に使用しています。アクリル塗料は仕上げが大変フラットになる、そして下地が透けて見えるという特徴があります。そのためエナメル、ラッカー主体の作品と比べると明らかに全体の(艶、色調、明度等を含んだ)仕上がりが異なる物になります。



2:主役としてのフィギア、そしてそれぞれの個性の強調

フィギア好きな自分の場合、作品には常に彼らが主役として陣取っています。
車輌はどちらかといいますと引き立て役として使用しています。また個々のフィギア自身にも個性を持たせるため、装備品や服装、そしてそれらの使用感(衣類破れ、ヘルメットの凹み、剥げ落ちた塗装面など)の違いには気を使いますが、特にそれぞれの顔と手には設定に適した表情を持たせること、そして衣類の色調は出来る限り上下で色味を変えることなど使用する色にも多くのバリエーションを用いるように注意しています。これは一体のフィギアを1両の車輌として作業を進めるようなものです。同型戦車2両を同時に登場させる作品はあっても、車体番号や迷彩塗装まで同じに仕上げる人は居ない様な感じ?でしょうか。


3:植物、地面の表現へのこだわり(考証?)

山に入ると花、草、木、土、水、石などを見かけますが、それらが通常どのように存在しているのかにいつも注目しています(はい、変なヤツです)。そしてその配置をそのまま作品上で再現するように努力しています。晴天時に全く水が流れなくても一度雨が降れば小川のようになる場所がありますが、そんな場所には大きな木は勿論、草花も根付きにくくなります。ですから似たような地形が作品上に存在するなら、そこには草等を植えるのはあまり好ましくありません。逆に風で飛ばされた種が溜まり易い窪んだ岩陰や木の根元、元々草のある場所には群生しがちです。(日当たり等もそうですが、実はこれだけで本が書けそうです!!)同じ草でも季節によって背丈が変化するのは当然ですが、その色合いに関しても同じことが言えます。夏は全体が青々とする草が殆どですが、では根本はどうか?その部分だけ茶色やダークイエローっぽい?!ものが多々あります。そして今の時期、多くはこの配色が逆のものが多いかもしれません。一つの草を同じ色で塗装してしまうと立体感が出ませんが、緑のグラデーションは勿論この辺も考慮に入れて仕上げると違いがでると思います。以前他誌において主役の高射砲に対してかなり大きめのベースを選択し製作したことがあります。余白部分の殆どを草でカバーしたのですが、違和感は無かったと感じています。スペースを埋めるためにドラム缶を置くのでは無く、元々あるはずの自然を配置することにより季節や空気感も多少余分に再現できるのではと考えています。忘れがちですが、作品の大きな部分を占める地面。この表現方法もまた自分にとって作品の個性を引き出す大切な要素です。



「全体として」

兵員輸送移動中や火砲牽引でも良かったが、それでは中央の車輌だけがポイントになりがちで単調。派手ではないが車輌ではなく、兵士たちに動きを持たせることにより地面自身の形にも意味を持たせようとした努力した。


「フィギュア」

各自の所持品、衣類は微妙に違う。目立つ頭部は略帽、色違いヘルメット、無帽等を使用。髪はパテで追加、目と同様色調がそれぞれ違う。ポーズは車輌へのフィットに関してはキットを生かしながらもストーリーに沿うように改造を加える。個々の兵の関連性に注意しながら(特に目線)バランス良い配置でレイアウトを行う。その際、顔の表情も重要だが種類が豊富で仕上げも抜群のホーネット製品は重宝する。しかし同社製品をただ使えば良いわけでは無く、"その"首の動きと表情が必要である場合のみ使用すべき。派手な迷彩服は登場しない換わりにそれぞれのユニフォームの色目は勿論、上着とパンツにも変化をもたせた。

キャプションより:


「グラウンドワーク」

@ランドムに!地面の形状に変化をつけ、草花の植え方、大きさ、色、そして種類に力を入れることより特に車輌以外に目立つストラクチャーや木が無くてもベースの単調さは避けられると考えています。草は雑草とスタティクグラスを使用していますが、両者を自然に混ぜ合わせて植えるのがコツ。土の部分にはドフィックス、木工用ボンド、茶漉しで濾した細かい砂、木屑を混ぜ合わせた秘伝のタレを用いています。塗装はタミヤアクリルブラウン系とグレイ系を混ぜたものを数色吹いています。今回はキャタピラで荒らされた湿った草を多々導入していますが、良いアクセントになったのでは。湿りの表現には主にタミヤアクリル及び乾燥後クリヤになる接着剤を使用。高低差はそれほど無いのだが、多少車輌を傾かせ、手前に浅い塹壕を配置すること等により実際以上の差があるように見せる工夫した。ベースはアイランド風であるためその形は"ランドム"であり特に正面の指定はありません。


「車両製作」

車輌の内側以外はリペイントされたと設定し、ダークイエローを基本に3色迷彩を施した。むき出しのトランスミッションは大きなポイント。ブルーグレーで塗装後、クリアを吹いて他の部分より光沢を持たせてある。油彩ローアンバーで油汚れを追加し一部エナメル銀で磨きをかけている。全体のチッピングはヴァレホのジャーマングレイ、イラクサンド、そして茶系を中心に品よく?施したつもり。そのほか地肌が出ている筈であろう場所には鉛筆を擦り付け、細かい傷をカッターで追加した。車体下部と側面にこびりついた"乾いた泥"はプラスチックを削った際に出る削りカスをタミヤラッカーシンナーで溶いたもので作り車体に擦り付けている。その後、木工用ボンド、砂、スタティクグラスを混ぜた"ウエットな泥"をサスペンションとキャタピラ、そして各転輪を中心にかなりの分量を絡めつけている。フィルタリングは無く、一度だけワッシングは行う。部分的にクリアを吹いて光沢を持たせ金属っぽさを出す。いわばフィギアとほぼ同じ方法で塗装、透けて見えるというアクリルの特徴を生かした薄めた塗料を生かす重ね塗
りで仕上げる。フィギアの場合は筆で車体の場合はそれをエアブラシで行っている。



フィギア:  マスターボックス、トライスター、ドラゴンのフィギアを基本に改造。ヘッドはこの3社に加えホーネット、ウルフ製も投入。塗装はタミヤアクリルを上下の衣類の色調を変化させてそれぞれ別々で吹いた後、細部&異なるグラデーションカラーは薄めに溶いたヴァレフォで数回に分けて重ね塗りを行ってある。個人的に頭部と手先、ブーツ等末端を最後に塗装する方が作業を進めやすい。(要するに持ち手にもなるので便利。アクリル塗料はそのフラットな仕上げが魅力だが、一度塗装した部分を手で触れると指紋跡がくっきりついてしまうために極力触れない努力が必要だ。またヘッドは最後に視線を合わせるための微調整を行うので、基本的に塗装とセッティングが終了してから接着している。しかし接着剤の処理をうまくこなさないとこれが悲劇を生むこともある・・・。)ストラップはデューロパテ完全に乾燥する前に銃に取り付け体になじませる。それ以外の追加工作はタミヤエポパテを使用してある。武器と一部装備品は本体とは別に塗装してある。



車輌:  ペダル類がしょぼいのでプラ板で作り直した。目立つ分部の各種ワイヤリングを追加、バッテリー及びパネル部分はより立体的になるよう加工した後、飛行機用ディカールを計器パネルに貼り付けた。ダメージ表現は前後フェンダー付近を中心に排気管付近にも施し、またそのパイプ先端部分を薄く加工、穴を開けてある。装備品は全て取り付けず一部はクランプ類のみ装着。新たにジェリカンラックと予備キャタピララック等を追加した。強引に後期仕様にするために、ボッシュライトを取り付けホーン及び車間表示灯をより後期のものと交換した。シフトレバードライバーをしっかり握らせる為、ドライバーを座席に接着させた後、フィットを確認して最後に取り付けた。


地面&ベース: 頻繁に使う草の材料に猫じゃらしがあるが、ほぐして植え込むだけではなく色々な形を作ると良いと思う。またフィギアの顔の向きが様々な方向に見ているが、これは視点をかえると違う表情を見せてくれるようにしたかったためである。今回の様に円形ベースで正面が設定されていな場合、この様なフィギア配置が面白いのではと思う。




Master box
このキット、多少大味ですが、服のしわやそれがもたらす質感は独特のよさがあると思います。また雰囲気もは抜群に良いのですが、若干モールに甘い部分がみられます。しかしまあこれは他社同様程度で少々修正すればやはり一味違うよいものに仕上がると感じてます。サイズは大きめであるためにタミヤやトライスター、最新のドラゴンなどに絡める場合は少し注意したほうが良いかも知れません。今回の作例の場合は彼を少し離れた場所に立たせていますが、これも一つの対処方法ではないかと・・・バーリンデン等となら全然OKです。(と言いつつも個人的には大きさの差は気になりません。まあ、背の高さに関してはいろいろ個人差が生じますから。ただし、所持品の大きさがまちまちだと困るのでその辺は統一する必要があると思います。)

ポーズの変更は殆どありませんが、各部のディーテールUPを行っています。襟、ポケット等(ボタンも!)は一度削り落とします。その後タミヤパテで立体的になるように注意しながら加工していきます。ポケットに物が入っているように出来ればリアルさが増すかも・・・。社会の窓もお忘れなく!

キットのそれとは多少違い重心は彼の左足にかかっています。腰を多少細工して頭を少し傾けるとそのように成ると思います。所持している武器の持ち方等によって重心の位置はかわるものなのでその辺を考えています。まあ単順に右肩に重いものを引っ掛けると左肩が下がると言うだけのことですが・・。

さて、一番右の画像は塗装が行える状態まで出来ています。でもフル装備の彼、塗るのは大変です。と言うことで彼の頭、左腕、ガスマスクケース、水筒、両手に持っている武器、そしてヘルメットは全て仮組み状態で接着は塗装が案了してからと言うことになります。自分の場合、車輌の時もそうですが、わりとばらばらでな状態で塗装を行います。これは出来るだけ綺麗に各部分を塗り分けるためではありますが、でも面倒といえば面倒ですね・・・。 3・25



殆どの装備品をはずしますが、基本塗装を行う前に左腕は接着しています。左の画像は上下のユニフォームの下塗り(タミヤアクリル)が終了したところです。上下の色を微妙に変えたのですが、画像では殆ど同じに見えてしまいますね・・・。右は細部を含めてほぼ塗装が完了しています。